Nature Around Takarazuka

兵庫県宝塚市周辺の自然や、川柳などの雑記帳

安田守「イモムシの教科書」

 

イモムシの教科書

イモムシの教科書

  • 作者:安田 守
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 単行本
 

 

 

 と言う訳で、本書を読了しました。

 すっごく読みやすい本でいて、内容も濃く深く広いという、一般向けの教科書としては理想的な一冊になっておりました。満足です。基本的に文章が中心の本のつくりとなっているので、イモムシハンドブックも併せて読めば(眺めれば)、更にイモムシに関する理解も深まりますね。

 「教科書」と謳っているので、特に感想はありませんが、読後に「鬼のナカジマ」とカバシタムクゲエダシャクの話が妙に印象に残りました。虫の図鑑だけでなく、虫屋の図鑑、つまり虫屋列伝みたいなのがあったら、更に面白いのかも知れませんね。個性豊かな方々の活躍のお陰で、私などは室内にいながら昆虫の世界の魅力の一片を写真や文章で享受できる訳です。改めてそう言った方々の人となりを、もっと知りたいなとも思いました。感謝と共に。

 

 

信念(川柳、その66)

 今、また昆虫に関する本を読んでいます。面白い。

 私は自然全般が好きだが、中でも一番好きなのは植物である。しかし、本を読むとなると、植物関連の本ってあまり面白くない。昆虫関連の方が、圧倒的に面白いと思う。

 基本的に、大人向けの昆虫本の構図は単純である。世間の大半の大人は虫が苦手だけど、著者当人は大好き。その狭間で揺れ動く著者の心や苦労が底流にある上で、未知なる自然界の魅力が描かれるから、読み手としてより面白く感じられるのだ。少なくとも、中途半端な昆虫好きの私にとっては。

 登山家が書く文章ってのも、私はほとんど苦手なのだが、植村直己の本は例外的に面白かった。彼も、「登山なんて・・・、冒険なんて・・・」という世間の目を、心のどこかで気にしつつ文章を書くから、登山家ではない私でも読めるのだと思う。自己陶酔型で信念の登山家の文章なんて、読めたもんじゃない。

 その点、植物の本ってのは、難しいんだよね。例えば、私は50歳のオッサンだが、「植物が好き」と人に話しても、特に反応がないのだ。これが「昆虫好きです」と言ったら、「えー!」とか、「いい歳をして」とか、何かしらの拒絶的反応があると思うのだが、植物の場合はそれがない。本当は拒絶されないことは歓迎材料なのだが、面白い文章を書くという点では、反発を原動力とすることが出来ないのだ。世間的に雑草は嫌われているとされるので、そこを逆手にとっての雑草の魅力を語る植物本は何冊も出ているが、文章としての面白みはさほどではない。

 結局のところ、植物って、良くも悪くも、あまり興味を持たれていないのだろう。昆虫に比べると。そんな中で、どうやったら面白い植物に関する文章を書けるのだろう? そんなこんな、あれこれ考えさせられる昆虫本は、やっぱり面白い。

 

 

信念の人が苦手で雲が好き

 

 

ムラサキホコリの仲間

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ムラサキホコリの仲間の未熟な子実体1 2020年9月22日 兵庫県宝塚市

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ムラサキホコリの仲間の未熟な子実体2 同上

 

 今週、とってもとっても嬉しかったのが、これです。

 最初は珍しい変形菌(粘菌)を見つけたと思っていたのですが、どうやらこれは未熟な子実体であるようです。下の白い部分が変形体なのでしょう。上の写真の右下のドロッとした感じの部分など、「粘菌」という言葉もよく出来ていて悪くないと思わせられます。そして、薄い紫色というか、ピンクに近い色合いの美しい事!

 私は理屈っぽい人間なので、「何故?」「どういう経緯で?」と考えるのが好きなのですが、変形菌たちは、そんな私の未熟な思考を吹っ飛ばしてくれます。この美しさ、考えたって分かろうはずがございません。そんな、有無を言わせぬ驚きを貰えるのも、森の魅力ですよね。

 

 

ヨコグラノキの実

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ヨコグラノキの実 2020年9月14日 兵庫県宝塚市

 

 

naturearoundtakarazuka.hatenablog.com

 

 

 六月の最初に書いた記事の続編となります。

 なかなか花も実も見たことがなかったヨコグラノキ。六月のボランティア活動再開時に、花を遠目ながら見ることが出来て嬉しくて、リンク記事を書きました。ところが、なんとその木が夏に強剪定されてしまったのです。道路に覆いかぶさるように枝が伸びていたので、仕方ないとはいえ、貴重種で樹名板もついているのだから、少しは考慮してほしかったな。まあ枯れてしまう事はなさそうな伐られ方ではあるけれど。

 それで実を見るのは諦めていたのですが、会の先輩が別の場所にもっと大きな木があるよと連れて行ってくれました。すっごく助かったし、嬉しかったです。実は盛夏に成るとのことで、もう終わりかけだったようですが、いくつか残っておりました。でもやはり手の届く範囲での結実はなし。双眼鏡で眺め、望遠で写しました。

 真夏にこんな赤系の実をつける木って、少ないと思います。木が赤い実をつけるのは、鳥に食べてもらって、離れた場所に種を運んでもらいたいから。木の実そのものが少ない時期ですし、果実が好きな野鳥には人気があるのかなって想像するのですが、どうなのでしょうね。それともこの時期、野鳥たちは餌となる昆虫が多いから、木の実には見向きもしないのでしょうか? ヨコグラノキは、それほど多くはありません。ということは、赤い実を真夏に付けるという戦略は、あまり上手くは行ってないという事なのかなあ?

 

 

森上信夫「オオカマキリと同伴出勤」

 

オオカマキリと同伴出勤―昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走

オオカマキリと同伴出勤―昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走

  • 作者:森上 信夫
  • 発売日: 2020/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 前回の記事で、スズメバチに刺されたことを川柳にしたいが作れない、と書いた。創作が出来ない時には、どうしたらよいか? 私の場合の答えは、「読書をすればよい」である。インプットがなければ、アウトプットもできない。最近、忙しくはあるが図鑑はずっと眺めている。時々、園芸雑誌の写真や記事も眺めている。でもどうやら写真よりも、言葉をわが脳は求めているのだろう。そんな訳で、久々に読書をすることにした。

 

 昆虫カメラマンによるエッセイ集である。大学職員をしながら、昆虫カメラマンでもある著者が、兼業であるからこそ生まれる苦労譚を、とても読みやすい平易な文章で書いてくれています。全くレベルは異なるが、私も今の生活の中に、どう自然観察や山のボランティアを組み込むかで頭を悩ませているので、共感できる部分がいろいろありました。結局は、徹夜の連続など、力業で著者は乗り切っておられ、体力のない私には真似のできない世界ではあるんだけれど。

 

 中で一番興味深かったのは、「カメラとの出会い」の章である。

 

 ぼくの撮る昆虫写真は当初からまずますのレベルで、夏が終わる頃には、これなら図鑑に載せてもそれほど見劣りしないのでは・・・と思えるほどになっていた。

(中略)

 フレーミングがよいというのは、「虫屋」としての経験値から来るものだろう。いつも虫を見る視線が、意識せずともその虫を魅力的に見せる「萌え」アングルであったり、似ている種とのわずかな識別点を見通せる角度であったり、カメラなしでも、すでに最適なポジションから虫を見る訓練ができているのだから、あとはその位置でシャッターを押すだけなのである。

 

 なるほどなあ!

 著者は自分を「ヘタレ」と何度も書いてはいるが、もちろん心の底には自信が漲っておられ、それが読者にも伝わってくる。その自信は、幼いころから虫をずっと観察し続けてきた経験から来るのだろう。人生の中で、虫を見る視線を鍛え続けて来られた訳ですね。すぐに標本を作ってその数ばかりを増やすのではなく、自然の中で生きる虫を見る視線を鍛え続けて来られた。その鍛錬の積み重ねが写真となって、私たちの目を楽しませてくれ、ワクワクさせてくれる。なるほど、なるほど、これは面白い。

 私は自然観察好きとしては、相当の後発であるから、著者に追いつくことなで到底できないけれど、刺激になりました。ちょうど良い時に、ちょうど良い本に出合うことが出来ました。有難うございます。

 

 

 

スズメバチ

 スズメバチに刺されました。唇と、そのすぐ下と、右肩の三か所。

 火曜日にボランティアの山作業に行った際、ササ刈りを刈り払い機でやりました。そこで目の前に巣があるのに気付かず、やられてしまったのです。

 たぶん、コガタスズメバチだと思うんです。巣の形や大きさが根拠ですが、確認はしてませんので、「たぶん」。

 実は、はじめて刺されました。スズメバチどころか、ミツバチやアシナガバチにもやられたことはなかった。山で作業をいろいろするようになったのは去年からですが、山歩きや自然観察は20年以上になるのだから、私は一生蜂に刺されぬままだと思ってたのですけど、甘かったですね。

 口周りの二か所は、すぐに手で絞り出して毒出し出来たせいか、それともコガタスズメバチであったから毒が少なかったのか、はたまた私自身の体質なのか、翌日まで痛みはあったものの、大して腫れることはなかったです。それでも食事はしにくかったですけどね。肩は、ポイズンリムーバーを使うタイミングが遅かったせいか、二日経った今も、痒みが残ってます。でもまあ、大したことはありません。ちなみに、医者には行きませんでした。

 

 私にとって、自然は学校です。これも自然を理解するには必要な痛みなのでしょう。だから、受け入れます。ただただ「痛かった」で終わってしまうのは勿体ないから、これを糧にさらに勉強するつもりでもあります。転んでもただでは起きません。。。

 でもさあ、今年は、マダニにやられ、スズメバチにやられ、忙しくて山に入る日数が激減している割には、個人的事件が多いんだよな。参りましたよ。これで最後だといいんだけどなあ。

 

 ところで、スズメバチに刺された事を川柳にしようと、この二日間考えているんだけど、出来ないんだ。そんな自分に腹が立つ。

 

 

ノブドウ

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ノブドウ 2020年9月4日 兵庫県宝塚市

 

 暑いです。今日も猛暑日になる予報です。体は暑さに慣れてしまって、最高気温35℃だと少し楽には感じるのですが、やはり疲れは蓄積しているのでしょう。目覚めが悪い。私としては、日中の暑さはともかく、朝晩が涼しくなってほしいの一念です。ずっと熱帯夜なので、疲れが取れません。

 さて、昨日は、山のボランティアに行ってきました。この9月は、休みの日程とボランティアの日程が上手く噛み合っていて、天候に問題がなければ、5日間の活動に参加が可能です。調査活動も含めると、月7日間も参加できます。肉体的にはきついけれど、心の健康を考えると森の中で体を動かすのが一番だから、楽しみな一か月なのです。10月以降は、参加できる日がかなり減ってしまいそうだから、余計に貴重な時間を充実させたいと強く願っております。そんな楽しみだった昨日、活動地に入る手前で、ヤマカガシ君(写真なし)が出迎えてくれました。楽しむだけじゃ駄目だぞ、注意もしろよと、毒蛇が警告を発してくれたようです。心して受け止めねば。

 昨日見かけた花は、クサギ、クズ、ヨシノアザミツルボ、オトコエシ、ヒヨドリバナ、コアカソ、キツネノマゴ、ガガイモといったあたり。そろそろ夏と秋の端境期ですね。そして、色づいているノブドウの実も見つけました。道端が宝石箱のようにノブドウの実で彩られる秋らしい日を、心待ちにしております。