Nature Around Takarazuka

兵庫県宝塚市周辺の自然や、川柳などの雑記帳

森上信夫「オオカマキリと同伴出勤」

 

オオカマキリと同伴出勤―昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走

オオカマキリと同伴出勤―昆虫カメラマン、虫に恋して東奔西走

  • 作者:森上 信夫
  • 発売日: 2020/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 前回の記事で、スズメバチに刺されたことを川柳にしたいが作れない、と書いた。創作が出来ない時には、どうしたらよいか? 私の場合の答えは、「読書をすればよい」である。インプットがなければ、アウトプットもできない。最近、忙しくはあるが図鑑はずっと眺めている。時々、園芸雑誌の写真や記事も眺めている。でもどうやら写真よりも、言葉をわが脳は求めているのだろう。そんな訳で、久々に読書をすることにした。

 

 昆虫カメラマンによるエッセイ集である。大学職員をしながら、昆虫カメラマンでもある著者が、兼業であるからこそ生まれる苦労譚を、とても読みやすい平易な文章で書いてくれています。全くレベルは異なるが、私も今の生活の中に、どう自然観察や山のボランティアを組み込むかで頭を悩ませているので、共感できる部分がいろいろありました。結局は、徹夜の連続など、力業で著者は乗り切っておられ、体力のない私には真似のできない世界ではあるんだけれど。

 

 中で一番興味深かったのは、「カメラとの出会い」の章である。

 

 ぼくの撮る昆虫写真は当初からまずますのレベルで、夏が終わる頃には、これなら図鑑に載せてもそれほど見劣りしないのでは・・・と思えるほどになっていた。

(中略)

 フレーミングがよいというのは、「虫屋」としての経験値から来るものだろう。いつも虫を見る視線が、意識せずともその虫を魅力的に見せる「萌え」アングルであったり、似ている種とのわずかな識別点を見通せる角度であったり、カメラなしでも、すでに最適なポジションから虫を見る訓練ができているのだから、あとはその位置でシャッターを押すだけなのである。

 

 なるほどなあ!

 著者は自分を「ヘタレ」と何度も書いてはいるが、もちろん心の底には自信が漲っておられ、それが読者にも伝わってくる。その自信は、幼いころから虫をずっと観察し続けてきた経験から来るのだろう。人生の中で、虫を見る視線を鍛え続けて来られた訳ですね。すぐに標本を作ってその数ばかりを増やすのではなく、自然の中で生きる虫を見る視線を鍛え続けて来られた。その鍛錬の積み重ねが写真となって、私たちの目を楽しませてくれ、ワクワクさせてくれる。なるほど、なるほど、これは面白い。

 私は自然観察好きとしては、相当の後発であるから、著者に追いつくことなで到底できないけれど、刺激になりました。ちょうど良い時に、ちょうど良い本に出合うことが出来ました。有難うございます。