Nature Around Takarazuka

兵庫県宝塚市周辺の自然や、川柳などの雑記帳

読書「気がつけば動物学者三代」

今泉忠明著「気がつけば動物学者三代」

気がつけば動物学者三代

気がつけば動物学者三代

 

 

 最近、最後まで読み切ったのは、この一冊のみ。

 「ざんねんないきもの事典」など、数多くの動物関連の著作がある今泉先生の自伝である。子供向きの本も多く、この先生の影響で生物学の世界に入った人も結構いるのだと、別の著者の本で読んだ記憶がある。私自身も、何冊か読ませてもらいました。大人をもワクワクさせる魅力ある本ばかりでした。

 自然好きで、読書好きだから、私も数多くの著名な先生の書かれたものを読んできましたが、偉大な研究者ってのは、癖が強いなと思わされることがしばしば。親に心配をかけたけど、どうしてもやりたいから生物学の世界に進んだ、などという突破力のある先生方は、強い個性をお持ちで、それが文章にも現れます。

 しかし、今泉忠明先生の本って、総体的に穏やかな雰囲気が溢れていて、身構えることなく読むことができます。まさに子供向き。そして、自分があまり前に出てこず、あくまで生き物が主役の本を書かれます。本書は自伝だから、例外的にご自身が主役ですけど。

 本著で改めて知ったのですが、「二世」だったのですね。スポーツや芸能、または政治家の世界には「二世」が数多くおられて、それぞれ別の分野であっても、共通するものが感じられます。悪く言えば、のほほん。でも、成功されている二世さんってのは、のほほんの中にしっかりとした矜持がある。なければ、世間に馬鹿にされて終わっているはずですから。

 今泉先生の著作は、そんな二世的雰囲気と矜持がバランスよく混じり合ってるから、外れなく楽しめるのだなと、本書を読んで納得しました。大偉人でなくても、強烈な個性はなくても、動物学者にはなれる。それって素敵なことですよね。

 

 他には、イリオモテヤマネコとカワウソの調査の章は、記録として貴重ですし、現地調査にあたる際の知見が詰まっていて、読み応えがあります。カワウソ調査については、もっともっと詳しく読みたいと思いました。先生の粘り強さには、本当に頭が下がります。ちょっと風が強くて、近所の自然の写真が撮れなかったとボヤいてしまう私などは、かの有名なカワウソの写真とその撮影の経緯のご苦労を、心に刻まねばなりません。

 

 改めて、こういう本を子供の時に読みたかったな。