ジャスティン・O・シュミット著 今西康子訳「蜂と蟻に刺されてみた:『痛さ』からわかった毒針昆虫のヒミツ」
ハチやアリについての本です。
刺されてみた実体験などを元に、いろんな面白い事が書かれているのですが、私にとっては第3章「史上初めて毒針を装備した昆虫」がとても有用でした。目からうろこ。
様々なハチやアリに刺され、その痛みの指数まで作り上げた著者によれば、基本単独で行動するハチと、社会性を進化させたハチに刺された痛みを比較すると、後者の方が痛いのだそうだ。守るべきものがどれだけあるか、の差らしい。
つまり、刺した相手に強烈な痛みを与える毒液を進化させることが出来たから、巣の中の卵や幼虫といったご馳走のかたまりを狙う捕食者を阻止できるようになり、社会性も進化させることが出来た。
なるほど、この視点を私は持っていませんでした。本書を読んでよかった。
防御力がしっかりしているからこその、社会性なんですね。
ちなみに日本にいる多くのアリのように、地中に巣を作ることによって十分防御できるのなら、針や毒液が退化している場合もある。むしろ小型の侵入者に効率よく対抗するために、顎による防御を進化させて。
私のように、とにかくハチに刺されたら痛いから嫌だとだけ思っていると、何も気づけないのだが、痛みにも差があることに注目すると、そのハチやアリの生態や進化の過程が見えてくるという視点は、とっても新鮮で面白かったです。
後半、具体的なそれぞれのハチ・アリについてのエピソードが書かれています。日本人には馴染みの薄い虫が多いですが、ヒアリやミツバチについてはとても興味深く読めました。
最近、他の読書から、生き物って飼ってみないと分からぬ事が多いんだなと思わされました。私は近所の低山で、昆虫をコンデジで写しているだけですが、刺されてみるとか、噛まれてみるとか、そんな接触を意識してみると、また別の世界が見えてくるらしいです。自力でその別の世界を見たいかと問われると、困っちゃうんですけどね。痛いのは、やっぱり怖いから。